第278号 魔改造

2024-02-29
第278号 魔改造

writer:杉 浦 秀 幸

 最近、楽しみにしているテレビ番組があります。それはNHK総合にて放送されている『魔改造の夜』という番組です。製造業に携わっている方であれば、ご存じの方もいるのではないでしょうか?2020年6月に放送が開始され、当初は不定期に放送されていましたが最近では1か月に1回程度放送されている番組です。内容は企業や大学生のエンジニアたちが玩具や日用家電などを主催者からのお題に合わせて改造を行い、その改造スペックを競うというものです。この番組が楽しみでたまらないのです!

 1つのお題に対して3チームで競い合い、改造の予算は試作を含め5万円以内と定められています。お題が出されてから本番までの時間は1か月半しかなく、本番での試技は各チーム2回のみとなります。「悪魔の降臨です!」というセリフと共に1回目の試技が行われます。その前に出されたお題に対して試行錯誤を重ねて完成させる様子も見ることが出来ます。各チームがどのようにお題に対してアイデアを出していくか、最終目的は同じですが各チームが考えたものは形や機構などはまったく違うものになり各チームの戦略が見えてくるので毎回楽しみです。仕様・予算・納期がある中で完成させるという内容は私が携わっている仕事にも共通する項目になるので私も参加している気持ちで観ています。

  1月末に放送された『おトイレ・ゆか・宙返り』のお題ではアヒルのおもちゃが便座に座っている状態で助走をして踏切地点に到達したら宙返りさせて目的地に正確に着地させる内容でした。どんなお題でも全てのチームが完璧を目指して製作をしているのですが、本番では上手くいかず失敗するチームもあります。この回も参加した1チームが1回目の試技でスタートボタンを押すと勢いよく前進して宙返りするはずでしたが、何故か後退してしまい失格となってしまいました。会場にいた方は何が起きたのかわからない様子でした。原因はモーターの配線間違いによるもので、前進と後退が逆に配線されていたようでした。2回目の試技の前に改修を行ったのですが結局修理が間に合わず『記録なし』という結果になってしまいました。1か月半かけて製作し、事前に何度も試運転したハズですがこのような単純なミスが本番で発生してしまいました。まさにこれが『悪魔の降臨』ということだと思いました。このような問題は私の職場にも潜んでいます。『今までも大丈夫』『前回と同じだから問題ない』など、このような考えでいると安心してしまい確認する作業を忘れて小さなミスが大きな問題に繋がることがあります。この安心してしまうということが【悪魔】という存在だと考えます。

 さて、参加しているチームはライバルにもかかわらず他のチームのことを応援しています。失敗したときは自分たちが失敗したかのように落ち込んでいます。また、成功すると会場のみんなで大喜びして盛り上がっています。同じ目標に対して試行錯誤しながら共に挑戦してきた仲間であると感じているからこそ、このように共感し合えるものであり心温まる気持ちになる瞬間でもあります。

 三和機工には【品質は我らの命です】という『朝礼唱和』があります。この朝礼唱和は全部で6項目あり、十数年前から社長の考案により各部署で毎日行う朝礼の最後に全員で唱和をして1日の始まりとしています。新入社員に於いては入社式の当日までに暗記して、式の最後に唱和をしてもらうなど社員であれば誰でも知っている行動指針となります。項目は『挨拶』『安全』『納期』『品質』『予算』『行動力』とあり、【品質は我らの命です】は文字通り『品質』の内容になります。最後の『行動力』は【思い立ったら即行動】【過ぎた時間は戻らない】と唱和は続きます。私は最近では何のために品質を守るのか自分自身に問いかけて【悪魔】の存在を忘れないように唱和をしています。私の職場でもお客様より依頼された設備をチームとして製作しています。品質は一人だけでは守ることは出来ません。チーム一丸となって品質の良い製品を作り上げてお客様に喜んでいただき、その積み重ねが信頼に繋がっていくと思います。さて今日もチーム全員でこころを【魔改造】をしていきましょう!

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