【三和新聞】197号

2017-05-31
第197号 『大人の言うこと』
writer: 太田 敏浩

先月の三和新聞に親の言うことを聞かないご子息の話題がありましたが、そんな悩みをお持ちのご家族に聴いてもらいたい曲、NakamuraEmiさんの『大人の言うことを聞け』・・・運転中に流れてきたこの曲にふとそんなことを思いました。若い人達に向けたメッセージソングです。

大人の範囲を20歳から80歳とするなら、中堅どころの大人になった私にとって『大人の言うこと』とは年上の方のみでなく、例えば年下の一流アスリートの言葉であっても、そこに『大人の言うこと』を感じます。それは【共感】であったり、自分に足らない物への【気付き】であったりしますが、今まで齢を重ねた経験があるからこそ感じることだと思います。今だから分かるとは経験があってこそですから、聞くことに大切なのは想像力だと思います。未経験なことに対してどれだけ想像力を働かせられるかが大切だと思います。そして大人にとって大切なことは伝える力だと思います。今や中堅の大人ですから相手に想像力を働かせられる伝え方を身に着けていきたいものです。

戦国武将の加藤清正をご存知でしょうか?かく言う私もそれほど詳しいわけではなく『秀吉の家臣』『槍の清正』『寅退治の図』『熊本城城主』といった単語程度の知識しかありません。昨年の熊本地震直後にライトアップされた熊本城の瓦が崩れていく様子がテレビに映し出されていました。辛うじて残った石垣によって熊本城の崩壊を免れ、現在復旧工事中です。熊本城には一度訪れたことがあり、石垣については『武者返し』と紹介されていました。上に行くに従い角度が急になる石垣は敵に登られることを防ぐ防御壁としての役割を担っていました。先に書いた知識から清正イコール武闘派のイメージのあった私にとって、下から見上げる急峻(きゅうしゅん)な石垣に自分のイメージと合点がいった思いでした。

しかし、先日NHKの熊本城の石垣特集の番組を観て、そのイメージは大きく覆されました。番組によれば熊本城の石垣は最新の耐震構造だったというのです。上に行くに従い急になっていく構造は地震の横揺れによる力を下方向に逃がすことにより石垣の崩壊を防いでいたのです。この構造を編み出した清正は武闘派だけでなくエンジニアとしての能力も兼ね備えた人物だったことにリスペクト。熊本城の石垣には明治に造られた石垣と清正の石垣があったそうですが、熊本地震により近代日本の礎となる明治の石垣は崩れ、それより遥か昔の清正の石垣が残った事実に驚かされました。東北地震の陸前高田の一本松に自然の猛威への成すすべのなさを覚えましたが、震度7に耐えた清正の石垣に人智への希望を感じました。これぞレガシーなのだと思います。

石垣に秘められた耐震構造という先人の知恵が今回の熊本地震から熊本城を守ったという教訓こそが『大人の言うことを聞け』ということに繋がるのではないでしょうか。『百聞は一見に如かず』と云います。一個人にとって経験は大切だと思いますが、仕事においては失敗も成功も『百聞は一見に如かず』では生産効率が上がりません。情報の共有が大切であり【聞く力】と、経験という大切な要素を補えるだけの【伝える力】を養うことが必要だと思います。そして良くも悪くもリスペクトされる大人になること。

私にとっての清正は上司だった笠原さんです。これからは私自身が清正として若い人たちに【大人の言うこと】を伝えていけるよう邁進していく所存です。そして熊本城の復旧工事完了後また見に行きたいです。石垣は被災前と同じ状態に積み上げられるそうです。その石垣を見上げた時、きっと前回とは違う感慨を抱くだろうな・・・。

最後にNakamuraEmiさんの歌詞を引用させて頂きます。『♪大人の言うことを聞け 決して言う通りにしろじゃない 光っていたら信じて 腐っていたら反面教師~♪』

 

Copyright(c) 2009 SANWA KIKO CO.LTD All Rights Reserved. Design by 三和機工株式会社