第282号 ○○ヨシタカ

2024-06-30
第282号 ○○ヨシタカ

writer:鈴 木 嘉 孝

 

 今年も半分が過ぎ、7月になった。人は歳を取ると年々1年が短く感じていく…そんな私も来年には50歳!生まれて半世紀かと思うと感慨深いものだ。昔の記憶をたどってみて思った。古い記憶ほど薄れているなぁ。詳細が思い出せないぞ!?記憶も髪の毛のように次第と薄れていくモノなのだ。そこで記憶がつるピカはげ丸(←これは覚えていた!※昔のマンガ)になる前に少し自分の人生を振り返りつつ、話を進めていこうと思うのでお付き合い頂きたい。

 時代(とき)は昭和…当時、近所にはまだ畑や空き地が数多く残り自宅の前には小川も流れていた。子供は外で遊ぶのが当たり前の時代。ある夏『少年ヨシタカ』は思った。今日は小川にダムを造って遊ぼう!早速、友達を誘い計画を練った。自宅の近所には建設会社があり、その敷地内にはセメントなどで使うであろう砂などが大量に保管してあったので、それをチョット拝借して小川をせき止めることにした。最初は2人だけだったが次第に近所の子供たちも集まり始め、最終的には6人程居たように思う。砂を運ぶ係と砂を踏み固める係、共に一丸となって汗をかいた結果!川の幅いっぱい、長さにして10m近く小川をせき止めることに成功した。というか大量の砂で埋め立てたのだ。凄く達成感があり、皆で歓喜に沸いたのを覚えている。その後、大人達に見つかり町内を揺るがす大事件となった。大きな代償を払うことになったが【皆で同じ目的を持ち、協力して事を成し遂げる喜び】を知った。大人の階段をひとつ上った気がした。

 時代(とき)は平成となり、少年ヨシタカは中学生になっていた。この頃がちょうどバブル景気の始まりである。近所にはコンビニも増え、周りの畑や空き地も減っていった。ホリデータワー(現在のロワジールホテル)が建ったのも、この頃だ。音楽もレコードからCDが主流となり、デジタル時代の幕開けといった感じだろうか。日本の好景気ぶりは両親の懐(ふところ)事情からも窺(うかが)えた。家の車やテレビは新調され、家族旅行から家のリフォームまで、明らかに羽振りが良かったと思う。高校生になった頃にはKING&QUEENというバブルの象徴的な都会のディスコが、こんな田舎町にまでオープンするという異常な事態となった。『思春期ヨシタカ』はボディコン姉ちゃん見たさに毎週末!足繁く通ったのは言うまでもない。しかし今思えば高校生で普通に入場出来ていたし、ボディコン姉ちゃんの中には同級生もいた事も考えれば『とんでもない時代』だったなと思う。この時、私は何を学んだのだろう!?しかしこんなバブル景気も長くは続かず、高校を卒業する前にバブルは弾(はじ)け、崩壊してしまう。就職を控えた生徒たちに先生が「これからの日本は大変な時代になっていく!特にお前らみたいな落ちこぼれは本当に大変なことになるぞ!」と言われたのを覚えている。今の時代にそれを言ったら大変なことになるのは先生の方だ。それだけ時代は変わったということだろう…。

 時は流れ~21世紀となり『青年ヨシタカ』は一人暮らしを始める。これも実は、半ば強制的に実家を出された。母親の言い分はこうだ「あんた、このままだと絶対に結婚せんら?敷金礼金は払ってやるで出ていきん!」といった感じだった。まだ26歳だったが、当時はそれくらいの歳で結婚の心配をされる時代でもあった。結果、悔しい話か?嬉しい話か母親の思惑通りとなり、26歳で付き合った彼女が今の嫁さんである。母上、ありがとう!と言っておく。そして30歳で結婚と同時に東京で暮らすことになり、新婚生活は大都会で迎える事となる。やはり日本は東京中心に周っている。頭ではわかってはいたが、生活してみて本当にそれを実感する事となった。若い事務員の言い放った言葉で「わたし、高校生くらいまで名古屋って大阪にあると思ってましたぁ~!」…この言葉は今でも脳裏に焼き付いている。埋立

 35歳、地元豊橋へ戻ってから『壮年ヨシタカ』は途端に太りだす。世の中にはスマートなスマートフォンが登場し出した頃だ。この辺りから時代の変化は一気に加速したように思う。『仮想現実』なる言葉を耳にするようになり、最近ではコロナ禍もあり家で過ごすことが増えて色んな事がリモートで済まされるようになった。…だから太ったと言い訳するつもりはないが『中年ヨシタカ』となった今、人生100年時代の折り返し地点だ。視力も低下し眼鏡をかけるようになった。家でゴロゴロ…YouTubeばかり見て過ごしているからかもしれない。そんな中『〇〇してみた系』の動画を観ていて思った。人の体験を見たり人の意見を聞くだけで気付けば見ているだけぇ~の人間になっていた。自分で考え行動し、成功や失敗や反省を繰り返すことで人は成長するものだと思う。残された人生、どう生きるかは自分次第だ。                          

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