第266号 夢の座布団

2023-02-28
第266号 夢の座布団

writer:菅 沼 稔

 サーフ(砂浜)からのヒラメ釣りを始めて約10年になるだろうか、その瞬間は不意に訪れました。昨年12月25日のクリスマスの事です。サンタさんから素敵なプレゼントが有りました。因みにその前日のクリスマスイブは私のお誕生日、22歳になる長男からお酒のプレゼントで芋焼酎の『魔王』を頂きました。以前少しだけ飲む機会が有り美味しかった話をしたのを覚えていてくれたようです。あまりの嬉しさと美味しさで、その日のうちに空けてしまい…後で後悔しました。そんな状況もあり翌日は朝早く起きられなかった為、お昼過ぎからのんびりと釣りに出掛けました。いつも行く時間は『朝マズメ』と言い魚の動きが活発になり釣れやすい時間帯の為、釣り人が多く自由にポイントが選べないのですが、お昼過ぎでしかもクリスマスだからなのか釣り人は数人でポイントは選び放題でした。

 釣り開始から30分程経った頃でしょうか、ズシン!とした重みが釣竿に伝わって来ました。咄嗟(とっさ)に合わせを入れましたがビクともしないので、地球でも釣ったかな?(根掛かり)と思った矢先に「ジージー!」と凄い勢いでドラグが鳴ります。『ドラグ』って何って方の為に解説するとドラグとは糸の強度を上回る大物の強い引きに対して、一定以上の力が加わるとリールから糸を送り出して仕掛けが切れないようにする為のリールの機能です。この機能が働くということはかなりの大物です。稀にエイや青物(ブリやサワラ)が掛かる時もあり、その時もかなりの引きなのですが今回の引きは明らかに違っていて【ヒラメだ!】それもかなりの大きさである事を確信し、心臓はバクバク♪でした。バラさない(糸が切れて逃がさない)ようにゆっくりと魚を弱らせてようやく波打ち際まで寄せた時に、ヒラメの魚体が確認出来ました。心拍数は更に上昇し、アドレナリン出まくりです!サーフ釣りあるあるなのですが波打ち際でバラす確率が非常に高いのです。過去に何度も苦い思いをしていますがこれ程の大物は経験がありません。波のタイミングに合わせて岸にずり上げようとしますが重すぎて上がって来ません。最後は引き波に合わせて波打ち際のヒラメ目掛けて突進し、尻尾をわしづかみでずり上げました。「ヒラメ捕ったど~♪」状態です。余りの大きさに膝が震えるほど興奮しました。サイズは70センチ有り【座布団ヒラメ】といわれるサイズです。アングラー(釣り人)の間では40センチ未満を『ソゲ』40センチ以上を『ヒラメ』60センチ以上を『小座布団』70センチ以上を『座布団』といいますが、このサイズを釣るのが多くのアングラ-の【夢】なのです。私のこれまでの最高記録は56センチでしたから小座布団を通り越して大幅な記録更新となりました。

 冒頭でも言いましたがこの釣りを始めて10年、最初の2年程は殆ど毎回、坊主(釣果ゼロ)でしたが雑誌やYouTubeで得た情報を元に色々と試して来ました。広大なサーフでは一見すると何の変哲もない様に見えますが、波の立ち方や崩れ方・海面の色や状態・潮の流れ・海鳥の動き等の情報から海の中の地形を想像してヒラメのいそうなポイントを探します。そしてヒラメがどんなベイト(餌となる小魚)を補食しているのか予測してルアーを選択、それを弱った小魚の如く操作し、時には大きな魚から逃げ惑う小魚の様に演出してヒラメにアピールするのです。ある程度の知識を身につけると、こんな時間帯は釣れないこんな場所では釣れない等の常識にとらわれてセオリ-通りになりがちですが、誰もやらない場所や方法を試して釣れた時は何とも言えない充実感が有ります。もちろん運だけで釣れることも有りますが、上級者は他の人が誰も釣れていない時でも釣果を出しているのですから、きっと人と違うことをしているのだと思います。ビジネスにおいても困難に直面した時や行き詰った時ほど、常識にとらわれずに自由な発想で新たな道を切り開いていきたいと思います。 

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