【三和新聞】208号

2018-04-29
第208号 春の風物詩
writer: 太 田 敏 浩

 地域ごとにそれぞれ春の風物詩があると思いますが、私の地元の風物詩といえば『ワカメ拾い』です(我が家でのみ風物詩扱いかもしれません)。私が子供の頃は、ワカメは自治会の貴重な収入源で、村中の大人が海に入ってワカメを収穫しトラックに載せて売りに行くという一大イベントでした。今では行事も無くなり、ワカメは自治会の『口開け』の合図を皮切りに個人での収穫を行うようになっています。私の父は毎年のワカメ取りを楽しみにしていて、『口開け』までの間、海の高台からワカメが群生しているところに狙いを定め、『口開け』の合図を、まさに口を開けて待っている人でした。寄る年波には勝てず、最近は海に入ることは無くなりましたが、浜辺に寄ったワカメ拾いは毎年の春先からの楽しみのようです。そんな海好きDNAを引き継いだ私ですが、これまで海に執着することなく生きてきたのですが・・・。

 私は昨年から毎朝、犬の散歩で足腰の鍛錬も兼ねて浜辺を歩くようになりました。冬の早朝は空っ風が身に沁みますが、浜辺に出ると北風は防風林に遮られ意外と快適です。そんな2月の初め頃、浜辺に流れ着いた小さなワカメを見つけ、拾って家に持ち帰りました。新ワカメは香りが若々しく、朝の味噌汁にうってつけですので家族にも喜ばれます。それからワカメを見つけると拾って帰る様になり、2月から3月へと月日が移るにつれ、日によっては驚くほど大量なワカメが流れ着くこともあり、ビニール袋をポケットに入れて散歩するようになりました。やがて持っていくビニール袋が一回り大きくなった頃、ワカメ拾いが朝の散歩の目的に変わっていました。その頃になると浜辺に寄ったワカメを狙うライバルも登場し始めます(主に、早起きお爺様&お婆様)。ライバルに負けじと日の出が早まるに従って目覚まし時計の設定時間も早まっていきました。次第に日の出前の薄暗い浜辺でも他の海藻の中からワカメを認識できる能力が備わっていきました。3月も終わりになるとワカメのシーズンも終わりに近づき、手ぶらで帰る日が一週間続いたりします。そんな4月の早朝、砂浜に大量のワカメが流れ着いている日がありました。4月のワカメは大きく成長して1本が2メートルを超える大物です!出勤前の朝から大汗をかきながらワカメを拾い集める自分はすっかりワカメ拾いにハマってしまったようです。今では家族に「もういらない!」と言われても拾わずにはいられなくなってしまいました。ワカメ拾いは私の仕事となり、今年の父はワカメ拾いに行っていません。今後の我が家でのワカメ拾いは私で定着のようです。

 つい最近、休日の昼間に犬の散歩で浜辺に出掛けてみると大潮で潮が引いて、いつもは海の中に隠れている岩場が海面から現れていました。岩にはぎっしりと付いたワカメが確認できます。今までせっせと拾っていたワカメは氷山の一角に過ぎなかったのです。お釈迦様の掌の孫悟空の気分ですが、ワカメの多い岩場に目星がついたので来年のワカメ拾いが今から楽しみです。

 楽しい時に脳内で分泌されるのが『やる気ホルモン』の『ドーパミン』です。ドーパミンはワクワクしたり、成功したりすると分泌される脳内伝達物質です。ワカメ拾いに一喜一憂している時、私の脳内ではドーパミンが盛んに分泌されていたことでしょう。仕事においても『探求心や想像力』を持ち続けることでドーパミンが分泌されてモチベーションや集中力が高まり、より良いモノづくりに繋がっていくと思います。今話題の『働き方改革』や『生産性の向上』にも一役買いそうですので仕事の中にワクワクを見つけることが大事だなと思います。

 以前、お客様との会食の席で「太田さんは何か作りたいものがありますか?」と問われたことがあります。その時は、その問いに答えられませんでしたが『モノづくりの楽しさ』ってそれなんだなと、すごくハッとさせられました。仕事に追われながらも『モノづくりは楽しい』という原点を忘れずにいたいものです。そしていつか!三和の『愛DEaBOX』にみんながワクワクするようなアイデアを投函したいですね♪

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