【三和新聞】28号

2003-03-01
第28号 思い込み

笑いたくても笑えない・・・そんな出来事が先日起こった。それは、とある会の、とある方が、その会の席上で、こう仰有ったのだ。「皆様、大変済みません!只今【ボクホウ】が入り、急遽向わねばならなくなりましたので・・・」会場にいた「皆様」は一斉に思った。(ボクホウ?・・・ソレを言うなら~訃報<フホウ>でしょ!)しかし、誰もツッコミを入れられる筈もなく、その方は慌てて会場をあとにした。その方が去った後、会場がざわめいたのは言うまでもない。確かに素朴の<ボク>に似ているが・・・カナリ年配の方だっただけに・・・心境は複雑である。

3月【第52号】 思い込み

無論、私も人のことは言えない。大学卒業時まで【月極】を<ゲッキョク>と読んでいた男である。しかも「月極駐車場」と書かれてあると「またゲッキョク不動産の駐車場かぁ~ゲッキョク不動産は日本各地にあるんだなぁ~!」とまで思っていたのである。【思い込み】とは、とっても恐いモノである。ここ最近でも私は大ボケをかましている。それは【フェーズ】を合わせるということを【フレーズ】と思っていたり、話の【焦点】<ショウテン>を<シュウテン>と思っていたり・・・日常茶(チャ!)飯事である・・・コレは、敢えて、ボケてみた。他にも、話の【触り<サワリ>】や歌のサワリのサワリとは<初めのちょこっとだけ>という意味だと思っていたら<話の要点・一番の聞かせ所>だったり【一姫二太郎】は<ひとり女の子で、あと二人は男の3人姉弟>と思っていたら<長女で長男という順番が良い>という言い伝えだったり・・・赤っ恥かきまくりである。さて、ここまでで「あ!そうなの!」「え!知らなかった!」という方は、更にこの先を心して一読されたし!と思う次第である。ここからは、私は合点承知の助だが~知らない方は知っておいた方がベリーグー!という分野に入っていくのである。要は、日ごろ私が「アレェ~?」と思っている事を、この場をお借りして言ってしまおう!という趣旨である。勝手なお節介である。小ウルサ爺である。しかし、お伝えしたいのである。

それは【役不足】という言葉である。これほど誤って使用されやすい言葉も珍しいと思うが、私はその間違われた【思い込み】の方でこの言葉をよく聞くのである。ただ誤っているだけなら良いのだが「役不足」の場合、正反対の意味になるので始末が悪い~ホント、要注意である。「役不足」というのは元々、役者に対して役が不足であることを指す言葉である。つまり、与えられた役目が軽すぎることを表すのである。あなたが上司に重要な任務を命ぜられた時に「役不足とは思いますが頑張ります!」などとは言ってはならないのである。

(本当に役不足だと思うのならOKである。)それは謙遜どころではなく、任務が自分にとって不当に軽いものである不満を表していることになる。逆パターンもある。コレは強引な例えだが、部下が何か失敗をしてしまって「だ~か~ら!お前じゃ役不足だと思ったんだ!」などと言ってしまうと、叱ってるんだか褒めてるんだか解らなくなってしまうのである・・・。もし、あなたが「役不足」という言葉を間違って使っていたなら、次回からは「力不足」とか「経験不足」などの言葉に置き換えるのがベリーグーである。さて、クドクド言ってしまったがクドクドついでにもうひとつ・・・しかし、コレは、こだわり過ぎか・・・でも、言ってしまおう。それは【御苦労様】という言葉である。日常よく耳にするこの「御苦労様」は相手の骨折りをねぎらう丁寧な言葉であるが、私にはど~も人様の苦労を高みから見物しているような語感がしてならないのである。気になるのである。この言葉は昔、主君が家来をねぎらう時に使った「ご苦労!」「ご苦労であった!」が転じたモノである。なので目上や位の上の人に対して使うことはタブーとされていたのである。しかし現在ではその言葉本来の意が薄れてきてしまって・・・しかし、シツコイ私は今回、調べてみたのである。文献は『大辞林』『学研国語大辞典』『集英社国語辞典』等々、5冊にわたってである。そのドレもコレもが、ほぼ同様~「目上の人に使わないのが普通。使うと、失礼。同等以下の者に対して使う。目上の人が、相手(目下)の苦労を尊敬した言い方」と書かれている。なので私は、どなたに対しても【御疲れ様】と言うようにしている。場合によっては【御世話様】である。なので給料袋を嫁さんに渡す時「御苦労様!」と言われると、つい「お疲れ様でしょうが!」と言ってしまう・・・私はイヤな夫である。いや、位は嫁さんの方が上だから、これでいいのか・・・?

さて今回も、自分の事を棚に上げまくってクドクドと言ってしまったのである。しかし、どーしても気になったので烏滸(おこ)がましいと思いつつ、書き綴った次第である。・・・日本語は本当に難しい。本来の意と全く逆説的に捉えられ浮遊している言葉は、まだまだ数多くあるのである。【情報】もまた然りである。何が真実か?・・・真意を突き詰めて、私は邁進したいと思うのである。

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