第245号 幸せの青い鳥

2021-05-31
第245号 幸せの青い鳥
writer:杉 浦 秀 幸

 『咬まれてもノーリアクションを徹底しましょう!』こんな文章が綴られている飼育本があります。【インコドリル】というタイトルのインコの飼育本に書かれている咬まれた時の対応の仕方です。『咬んでもいいことがない』と教えることが大事で、手を出しても咬まなかった時はたくさん褒めると良いそうです。生後1か月ぐらいのセキセイインコのひなをペットショップで見つけて青色と黄色のかわいい小鳥ちゃん2羽が我が家に来たのは昨年9月の事でした・・・。

 以前、猫を飼っていたのですが一昨年に老衰のため14年の生涯を終えて天国へ旅立ちました。毎日お世話をしていた長女は最愛の猫が亡くなり【ペットロス】になり少し気落ちしていました。娘は「アレルギーがあるため猫はもう飼えないけど他の動物なら飼えないのか?」との思いから通院をしている病院の先生に相談したところ「カメ、ヘビ、トカゲなど体毛が飛ばない動物なら問題ありません。」とのことでした。さすがに、爬虫類系は・・・。期待していた答えが返ってこなかった為、娘は「他の動物は?」とスグ聞き返したそうで、その反応を見て先生は「小鳥なら大丈夫かもしれませんね(笑)」と言ってくれたそうです。初めはセキセイインコを1羽だけ飼う予定でペットショップへ行きました。店員さんに相談しながら探していると、ひな鳥が2羽だけ別のかごに入れられていて仲良く寄り添っていました。「生後1か月ぐらいなので今から育てれば手乗りインコになるし、おしゃべりもするかも!」と勧めてくれました。その仲良く遊んでいる姿をみたら可愛くなり「2羽を引き離したらかわいそう!」という気持ちが湧いてきて、2羽とも我が家の仲間入りすることになりました。青色の方を『エナ』黄色の方を『ノン』と名付けてインコの飼育を開始しました。

 ペットショップにいた時には仲良く寄り添っていたのですが暫くするとエサの取り合いで喧嘩をし、体の小さな『ノン(黄)』がエサを食べようとすると『エナ(青)』が突っついて攻撃をするようになりました。セキセイインコの飼育は初めてなのでこのような時の対策をネットで検索をしてみたところ『攻撃する方を他のゲージに移すと良い』と書かれていました。しかし、元々1羽だけ飼う予定だったのでゲージは1つしか用意してありませんでした。また、ゲージを2つ置くスペースもなく1つのゲージで何とかしたいと思い考えた結果、とりあえずエサ箱を2つに増やしてみることにしました。そのエサ箱をゲージの中の離れた場所にそれぞれ設置してみたところ2羽が一緒にエサを食べるようになり再び仲良く遊ぶようになりました。こんな感じで飼育を始めてから1か月ほど経った朝、いつものように娘がゲージを覗きに行くと『ノン』がゲージの下の方で横たわっていたようで・・・冷たくなって、既に亡くなっていました。前日まで何も様子がおかしいこともなく元気にしていたのに「病気だったのか?エナと喧嘩して傷を負ったのか?」などと考えましたが原因はわかりませんでした。お世話をしていた娘はショックを受けていましたが、残った『エナ』を今まで以上に大事に育てるようになりました。

 毎日、朝と夕方にゲージから出して話しかけて遊んであげると手に乗るようになり、そして肩にも乗るようになりました。ゲージが汚れたら掃除をして、エサを散らかした後の片づけなど毎日お世話をすることで『エナ』は娘を信頼して警戒しなくなっていきました。『エナ』も娘のことが大好きになり、洋服の中に潜り込んだりしてとても仲良くなりました。そんなある日、娘がいつものように遊んでいた時に袖の中に違和感があったようで服を脱いでみたところ袖からなんと!卵が出てきたそうです。娘から聞いた時は「なぜ1羽なのに卵を産む?」と驚きましたが、発情するとメスは1羽でも卵を産むようになるようです。いわゆる無精卵でした。娘のことが好きすぎて発情して卵を産んだようでした。卵を産むほど愛している娘には何をされても『エナ』は怒りません。咬みつかれるのは長女以外の家族で、自分は手や唇など咬まれまくりです。

 しかし、よく考えたら当然のことです。自分はエサをやったり水を替えることをしたことがありませんし、もちろんゲージの掃除など一度もしたことがないからです。ノーリアクションに徹する前に『エナ』のして欲しいことをしてあげて信頼関係を深めないと改善されないようです。仕事においてもお客様や相手のことを一番に考えて行動すればきっと信頼して頂けるようになり、自分たちのことを好きになってくれるはずです。大切な心構えを身近にいる小さな小鳥に教えてもらいました。
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