第221号 親不知

2019-05-31
第221号 親不知

writer: 小 林 照 宜

 『平成』から新元号『令和』となりテレビでは様々な特集を放送していますが、私的には、仕事の都合上色々な式典を見る機会が少なく改元にはピンとこない普段通りの生活を送っています。ところで話しはコロッと変わりますが皆さん、歯医者さんは好きですか?私は大の苦手でして・・・ちょっとした事では、中々行くことが出来ません。そんな性格が災いして【親不知(おやしらず)】を抜く事になりました・・・。

 昨年の2月、既にその2~3ヶ月前から右下の奥歯がズキズキと痛かったのですが段々グラグラになり流石に治療をしなくてはいけないと思い近所の歯科医へ行きました。これまで私は色々な歯科医さんに通いましたが何かしっくりせず定着しませんでした。近年自宅の近くに新しく開業された歯科医が出来、噂に聞くと女医さんという事なので物は試し!と行ってみる事にしました。予約を取り診察を受けると痛くなっていた歯は即刻「抜かなければいけません!」と宣告され、その歯を抜くと奥に歯茎の中に隠れている【親不知】が有り厄介な事に抜こうとしている歯に向かって真直ぐ横に生えていて痛む歯を抜くと親不知も抜かなければいけないとの事でした。親不知を抜くにはメスを入れて口の中を切らないといけないので町医者では出来ない。市民病院の口腔外科に行かないといけないそうで「紹介状を書くので行って下さい!」と言われました。更に「痛んだ歯は今日今から抜きますか。それとも市民病院で親不知と一緒に抜いてもらいますか?」ともう抜く前提の話ばかりされます。抜かずに治す選択肢は無いかと聞こうと思いましたが全然そんな雰囲気ではないので聞くのを諦めました。歯を抜くことは全くの想定外でショックが大きく初診のその日に抜くことに決心がつかず市民病院で抜いてもらうことにして紹介状を書いてもらい、すごく重い気分になって自宅に帰りました。

 週明けに市民病院に電話をして予約を取り会社には休日をもらい、いざ市民病院へ。ロビーに入るなり何処へ行けば良いか分かりません。近頃の病院は私の様な人が多いのか入り口に立っていて案内してくれる人がいます。早速受付の場所を聞いて紹介状を渡し今度は受診の受付です。受診受付の所にも人がいて何も分からない私は言われるがまま画面を操作して受診票のプリントをもらいました。次は診療受付です。受付カウンターで受診票を渡しモニター画面に受診番号が出るのを待ちます。受診番号が表示され中待合では5~6人の人が待っていました。私は今まで経験したことにない市民病院で歯を抜くという行事に内心ドキドキで他の人に悟られないように平静を装っていました。いよいよ名前を呼ばれ診察室の中に入り椅子に座りました。さあ診察と思い先生に目をやると何と若い女医さんでした。しかも少しあどけなさも残る利発的な美人です。こんな綺麗な女医先生に歯を抜いてもらうなんて・・・と私は少し恥ずかしい気持ちになりました。「今日抜かれますか?」と尋ねられたので「是非!」と答え、女医先生の予定を確認しその日の午後抜くことが決まりました。午後になりいよいよ抜歯です。予約してあるのでそのまま診療受付へ午前中に貰ってあった受診票を渡し直ぐ中待合へ入りました。名前を呼ばれて診察室へ口を開けて状態を診察して治療台へ歯茎に塗る麻酔の後注射の麻酔を打たれました。麻酔の効いた頃『手術?』開始です。先ずはグラグラになった奥歯を抜きます。顔にガーゼを被せられているので何も見えませんが歯医者さん特有の「キーン!」という音と共に私の口の中で「ガリガリ!」と振動が伝わって来ます。5~6分すると「小林さん先ず1本抜けましたよ」声を掛けられます。私は口を開けたまま「アーアー」と返事をしました。「じゃあ親不知を抜きますね♪」と女医さんが言うと先程よりも太い「ブーン!」という音が聞こえ暫くすると明らかに力強く削る振動が「ゴリゴリゴリ!」と口の中でします。少し心配になって来ましたがここまで来て辞める訳にはいきません。今回の様な抜歯は先生にとっては日常茶飯事だよなと自分に言いきかせ先生に任せます。それでも「あれー!」とか「どうしよう?」とか私を不安にさせる会話が聞こえてきます。一向に終わる気配がありません。削ってはグイグイと抜こうとする行為が4~5回となく続き口の中でスポッ!と抜けた様な感触した瞬間「小林さん抜けましたよ♪」と安心した口調で告げられました。その後も20分ほど後処置が続き、全体で1時間弱掛かって私の抜歯は終了しました。抜歯後に抜かれた歯を見せてもらい「持って帰りますか?」と尋ねられましたが持って帰っても誰に自慢する訳でもないので「・・・要らないです。」と遠慮しました。診察の後「麻酔が切れると痛くなるので頓服を出しておきますね!」言われ診察室を後にしました。会計カウンターで会計を済ませ処方箋をもらい近くの薬局へ、ここでようやく『抜歯』が終わった・・・と、ほっとしたことを覚えています。

 私が子供のころは誰もが虫歯になっていた記憶があります。今では高齢者施設や公立の小学校などでは定期的に歯科衛生士の人が来て歯磨きの練習をしたりフッ素体操なるものもあり虫歯予防に力を入れています。先日テレビでヨーロッパの国では国民に虫歯が無く老人になっても自分の歯で物が食べられると放送していました。昔に比べて虫歯になる度合いは減りましたが、それでも私の様に歯槽膿漏になれば歯を抜く事になります。日頃の歯磨きは重要です。毎日の行動が後々の礎になって行きます。私たちの日常、仕事でも日頃の積み重ねが必要不可欠と再認識させられる出来事でした。

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