【三和新聞】159号

2014-03-01
第159号 永遠の・・・
writer:  新妻吾郎

『徳之島 -とくのしま-』に先月半ばに行ってきた。鹿児島県に属するが、南西諸島の奄美大島の下にあり沖永良部島(おきのえらぶじま)の上にある~徳之島である。
人口は約27.000人で島の周囲は、およそ80km。方言は琉球(奄美)方言で、お年を召した方々の会話は~耳を澄ませどもチンプンカンである。『島唄』も三線(サンシン)を使ったものが多く、本土より沖縄に文化的には近いが、酒は泡盛ではなく~黒糖焼酎である。さて、何故に徳之島に行ったのか?それは我が愛妻のルーツだからである・・・。

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妻の両親は徳之島生まれであり、また両祖父母も徳之島&奄美大島出身で皆様~お元気バリバリである♪その皆様が今は東京の方に移り住まれたのだが、ご先祖様の『お墓』が島にあり、今回『お墓』の『お引越し行事』に参列するため、私は初めて!徳之島の地を踏んだのである。しかし、ここで事件は起こる。私達は中部国際空港から向かったので良かったのだが、東京出発の御一行は~あの記録的な大雪に見舞われ羽田から飛行機が飛ばなかったのだ・・・なんとか1日遅れで皆、到着されたのだが~御父さんは6年ぶり、御母さんは20年ぶりの帰郷で、50名を超える『島の仲間たち』が、1日遅れのために『主役抜きの同窓会』となってしまったのである。しかし、遅れた到着当日も、またその翌日も御父さん、御母さんに『島の仲間たち』は次々と駆けつけて・・・本当に、本当に強い島人(しまんちゅ)の【絆】を私は感じた―――。

家内の御父さん方の御爺ちゃんは今年86歳で、4人の子供に~12人の孫を持ち、4月には16人目の『ひ孫』を抱く予定の【スーパー御爺ちゃん】である!自分から始まる家系図は、まるでトーナメント表のようであり「さぁ~吾郎ちゃんも、ココに名を入れなさい♪」と、私はお婿さんに来たのかな?と思いつつ、名前を書き入れると私と妻の間にスーッと下線を引き、耳元で「早く頑張りなさい♡」と黒糖焼酎をドボドボと注がれた。

翌日、1周80kmの徳之島♪レンタカーで観光をした。牛と牛とが戦う『闘牛』が盛んであり、正月・GW・10月などのシーズンには島中が熱い熱気に包まれる!らしいが今回は観ることが出来ず、熱い熱気といえば~もう『なんちゃってトライアスリート』とも言えないほど時が経ってしまったが~トライアスロンのメッカでもある。また『南海のハブ』と愛称が付けられた『旭道山』の出身地でもあり、1995年までギネス公認の世界最長寿120歳!『泉重千代さん』のおウチも拝見し、ガジュマルの樹を横目にソテツトンネルを通り抜け~ムシロ瀬では大岩を持ち上げ?犬の門蓋(いんのじょうぶた)では△マークの中に『東映』と出てきそうな岩に打ち付けられる荒波を見ていたら、予想もしない高波に体半分がズブ濡れとなり、その後~放牧されている牛と戯れようとしたら、牛が逃げないための電線に服がズブ濡れのために感電し、今までの人生で味わったことのない「ヴァチッ!」という音と痛みが肘から背中を突き抜けたりもしたが~楽しかった♪・・・そして、犬田布岬(いぬたぶみさき)に辿り着く。夕日の名所で、1945年(昭和20年)4月7日。沈没の位置は諸説あるが沖縄へ南下途中、徳之島沖合で撃沈された『戦艦大和』の慰霊碑がそこにある。合掌する人の手をかたどった高さ24mの慰霊塔が東シナ海の西方沖に向いて建てられ、全国的な募金によって1968年(昭和43年)に完成したそうである。その慰霊塔の前に立った時、なんとも言葉では言い表しようのない感情が胸にこみ上げてきた。

さて、話しは【スーパー御爺ちゃん】に戻る。御年86歳・・・戦時中は、かの『山本五十六』を上官とする隊に属し『神風特別攻撃隊』・・・通称『特攻隊』に所属していた。来る日も『零戦(ゼロ戦)』に乗り込み、飛行訓練を重ね【特攻命令】を待つ身だったそうだ。まさにリアル【永遠の0】である。仲間たちに次々と『命令』が下り、空に飛び立ってゆく姿を見送り、自分の番が近づいた頃にはゼロ戦機がもう無かったそうだ。すぐさま空軍から陸軍に配属変更され、今度は爆弾を自ら抱え持っては走り~アメリカ軍の戦車の下に潜り込むという訓練を重ねていたら1945年8月15日【終戦】を迎えたそうである・・・どんな思いで【特攻命令】を待っていたのだろう。どんな感情で仲間たちを見送っていたのだろう。どんな気持ちで走っていたのだろう・・・思うともう、胸が締め付けられて、涙が止まらない・・・。

生き残された者の務めがある。忘れてはならない過去<真実>がある。失ってしまった戦友との【絆】は永遠である―――と、御爺ちゃんは云う。心から感謝して止まない。御爺ちゃんが生きていてくれたから、私たちが生かされているのだから・・・。そして時代は違えども、私も心から思う・・・仲間との【絆】は永遠である―――――

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