【三和新聞】86号

2008-01-01
第86号  ピースサイン2

謹んで新春をお慶び申し上げます。さて、続編である。まずは前月のあらすじ?のおさらい♪・・・私は旅に出た。『バイクソロツーリングin北海道』である。バイクはイイ♪実にイイ♪車もイイけど~車じゃ見えないバンク(角度)の景色がある。五感でモロに感じる温度や匂いがある。そして何より~風の詩を聴かせてくれる。そんな大好きなバイクに大好きな北の大地~もう最高である♪そこでハーレーに乗ったチョイ悪オヤジと私は出逢った。会話を交わすことは無かったが【ピースサイン】ひとつで、心が通じ合えた気がした。私は最高の旅をした!・・・で、何日間だったって?・・・え~と、だから10日間ほど。(冷汗)

1月【第86号】  ピースサイン2

沖縄より北海道が暑い!という異常気象に見舞われた去年の夏。流石!晴れ男♪←自画自賛!ということで、タンクトップで宗谷岬に到着した。『日本最北端の地』と書かれた石碑の更に後ろに廻り「最北端の最北端だぁ~♪」と記念写真に万歳三唱。テンションは高まるばかりである。建ち並ぶ店はドコも『日本で一番北の食べ処!食堂最北端』とか『ガソリンスタンド最北端』とか『最北端の宿!最北端』とか、とにかく宗谷岬は『最北端』がウリである。そんな中『おみやげ屋!最北端』に足を踏み入れた。想像に容易く、店内は最北端グッズで溢れんばかりである。その時、1人のオッさんが目に止まった。ヘルメットはしてないが、あのガタイに~あのお髭!間違いない♪ハーレーのオッさんだ!私は嬉しくなってオッさんに近づいた。オッさんも私に気付き、ニカーッと笑って応えてくれた。そして「さっきはどうも♪横浜からですよね~♪」と私が話しかけた瞬間!オッさんは口と耳を交互にふさぎながら(僕は喋れないんだよ)というジェスチャーをした。「・・・え?」と一瞬、私は戸惑ってしまった。それを悟ったようにオッさんは(いいんだよ!大丈夫だよ♪)とニカーッと笑いながら人混みの中へ消えていった。・・・手話が出来なくても、何かジェスチャーで話せばイイじゃん!と思い、オッさんを追い掛けたが、その一瞬の躊躇した時間で見失ってしまったのである・・・。

後悔の念に駆られながらオホーツク海を横目にバイクを網走方面へと走らせた。すれ違うバイカー達にピースサインを送る度、ドカンとデカイ♪ピースサインを送っていたオッさんの姿を思い出した。言葉が無くても通じ合える【ピースサイン】それは、こんな言い方をすれば【差別】と誤解されるかも知れないが・・・本当に、分け隔てのない健常者と聾唖(ろうあ)者とのコミュニケーションであった。色んな事が頭をよぎり、色んな事が心に迫ってきた。そして一瞬でもたじろいだ自分が恥ずかしかった。情けなかった。・・・そして、呆然と走ること3時間。夕暮れ迫るサロマ湖近くの『道の駅』にて休息を取った。疲れた身体に網焼きで売っているツブ貝やホタテがめちゃめちゃ美味そうに見えた。「食うか!」と列に並ぶと後ろから肩を叩かれた。振り向くと~そこにはハーレーのオッさん!「う、う、うぉ~♪」である。オッさんも(アンタとはよく会うなぁ~♪)という顔でニカーッと笑った!私は溢れんばかりの思いをジェスチャーでオッさんに伝えた・・・。ノシャップ岬で初めて逢って、宗谷岬からサロマ湖まで~実に約250kmの奇跡である。私は偶然という必然に感謝した・・・。

さてさて、果てしなく続く~真っ直ぐな道をボーッと走っていると、ボーッとした事を色々と考える。例えば【新妻吾郎】っていう漢字を、俺は今までに何百、何千回~書いてきただろう?というくだらない事とか。画数が少なければ、もっと楽だっただろうに~とか。この旅で何十匹の小さい虫が目や口に入り、何千?何万匹の小さい虫やトンボが俺の体やバイクに当たって死んだのだろうか~とか。今まで、どれだけ俺は心臓が鼓動して、食べて、飲んで、垂れて、呼吸をしてきたのだろうか~とか。どれだけ信じて、裏切られて、恋して、愛して、感動して、震えて、涙を流して、怒って、歌って、笑って・・・もうありとあらゆる全ての事を俺はどれだけしたのだろう。そして、これからどれだけするのだろうか・・・とか。灼熱地獄のような太陽の下で、先が見えない濃霧の中で、激しく突き刺さる豪雨に打たれながら~ボーッと走って、ボーッと考えた。そして、これからどれだけの命が俺にはあって、どれだけの人に何をする事が出来るのだろう・・・と。勿論、答えは無かった。ただ、どうにも成らない事が必ず人生にはやってきて、それらを受け入れて、そこから、どう前に進むのかが大切!という事。凛と構え、男らしく!堂々と。そして何よりも俺らしく、俺らしく。これから起こり得る全ての事に~いつもドカンとデカイ♪ピースサインを俺は送り続けたい。

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