第236号 先人に学ぶ

2020-08-31
第236号 先人に学ぶ

writer: 杉 浦 秀 幸

 今年の夏はオリンピックのニュースが流れて日本中が盛り上がっているはずでしたが、新型コロナウィルスの影響で1年延期となり少し寂しく感じます。しかし、九州地方や中部地方、東北地方では7月に豪雨に見舞われ甚大な被害をもたらしたので、もしオリンピックが開催されていたら関係者の方はその対応にも追われて大変なことになっていたかもしれません。来年は何事もなくオリンピックが開催できることを願っています。(まず、開催される事を何よりも願っていますが・・・)また様々なイベントが中止や延期になり、自分も以前より出かける機会が少なくなりました。県外への移動は自粛ということなので先日、初めて市内にある『東海道五十三次』の1つの『二川宿本陣』へ行ってきました。今回はそのことについてお話していきます。

 

 自分はもともと社会や歴史は好きではなかったのですが、あるキッカケで歴史に興味を持つようになりました。それは2014年に放送された『信長協奏曲』というテレビドラマです。原作は漫画ですがドラマ化されたもので、映画にもなっています。題名の通り織田信長が主役なのですが、その織田信長が『現代からタイムスリップした普通の高校生だった!』という斬新な設定となっています。典型的な現代人と戦国の世ならではの武士道精神の武将たちがからみ合い、弱小大名にすぎなかった織田家の若武者たちが、未来から来たその高校生の力によって『天下統一』という途方もない夢に向かって進んでいく姿を、戦国時代を舞台に描いています。このドラマを観て本当の織田信長はどんな人だったのか?戦はどんな戦術で挑んでいたのか?など・・・とても知りたくなり、色々と調べるようになり戦国武将や歴史に興味を持つようになりました。面白いドラマですので興味を持たれた方は是非観て下さい!

 さて、話は江戸時代に移ります。江戸と京を結ぶ東海道は江戸時代に徳川家康によって作られ、53の宿場を設置したことで『東海道五十三次』と呼ばれているそうです。『二川宿本陣』は江戸の日本橋から33番目の宿場町となり、本陣と旅籠屋(はたごや)の建物が残されています。現代でいうところのホテルになります。本陣は大名、旅籠屋は庶民が宿泊する施設で豪華さが違いました。江戸と京の間は約492キロあり1日に32~40キロ宿場町の間を8~10時間かけて歩いたそうです。江戸から京に行くには毎日歩いて12~15日かかる計算になります。自分は趣味でマラソンをしていますが、初参加のフルマラソンの時には5時間以上かかりました。それに比べ江戸時代の人たちは重たい荷物を持ち、履物も草鞋(わらじ)履きであったことも考え合わせると、フルマラソン以上の負荷を15日間も続けることになります。一般的に昔の人は想像以上に健脚だといえそうです・・・。

 今では、東京から京都まで新幹線を利用すれば約2時間20分で行けます。日帰りも可能です。江戸時代の人は誰もこんな便利な乗り物ができるとは想像しなかったでしょう。当時の乗り物といえば駕籠(かご)ですが、展示されている駕籠の細かな装飾や建物内で使用していた引き戸の鍵に当時の人の知恵と技術を見ることができました。現代のように大量生産出来る訳ではないため1つ1つ手作業で丁寧に作り上げていたと感じ、「どうやって作るのだろうか?」「どんな道具を使っていたのか?」と思いながら展示品を眺めていました。最近では自分たちの使用している工具も進化してきており、ホームセンターやネットなどで購入しやすくなりとても便利になりました。その反面で工具に頼りすぎてしまい、自分で考えて治具を作るなどの発想が乏しくなっているかもしれません・・・。

 こうして古い建物や調度品を見ると江戸時代の人々の旅の様子や技術、知恵が分かりとても面白い資料館でした。先人に学ぶという点で、我が家には家訓として【上見て進め、下見て暮らせ!】という言葉が掲げてあります。これは義父から受け継ぎました。「常に上を目指して進んで行きながらも決して贅沢はせずに自分自身をしっかりと見つめて事にあたるように」と書いてありました。今後もこの言葉を胸に進んで行きたいと思います。

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