【三和新聞】190号

2016-10-31
第190号 『望星丸二世』
writer: 新妻 吾郎

あれは1989年~当時、私は20歳の大学2年生。我が母校『東海大学』は海洋学部があり『望星丸二世(ぼうせいまる)』なる実習船を保有していた。そして毎年2月中旬から海外研修を行っており、チョイとしたキッカケでチョイとした試験を通過し、晴れて~『第21回 東海大学海外研修航海』に参加する事になったのである。研修期間は48日間!寄港地は、台湾(花蓮)→タイ(バンコク)→バリ島→パラオである。今思えば夢のような旅(研修)であり、ほぼ28年経つ今でもFacebookやSNSで繋がっていたり、すぐ呑める仲間達や先生方がいる・・・ありがたやぁ~♪

さて寄港地だけ見ると、優雅な旅やなぁ~と思われるかもしれない。しかし!そこそこ過酷な研修で、まず台湾へ向かうために黒潮(日本海流)に突進し南下しなければならない。荒波にぶつかりながら進むので、これが途轍もなく揺れる。ノーズ(船の突端)が7~8mは上下運動を繰り返す。それが黒潮のキビシイ所を抜ける約3日間は続く。つまり24時間×3日間=72時間。ずーっと遊園地にある『バイキング』に乗っているようなモンである。ほぉ~ら♪気持ち悪いでしょう!この航海時の学生は男子が36名、女子19名の55名。引率の先生が11名で全66名。その殆どが、この期間ベッドから起き上がれず~元気なのは5名のみだった。三半規管が強いのかアホなのか?私も、その5名の中の1人だった。他、海洋学部4年の実習生が30名ほどと15名のプロ乗組員さんで構成され、望星丸を24時間体制で動かすのである。

陸を離れ、海に揺られながら~動ける5名だけで音吉さん(船の食事責任者)から全員に配給される食事を長テーブルに並べ、みんなを起こしに行くも皆~起きず、時折くる大揺れの酷さに食事は一瞬で流れてゆき床にバッシャーン!はい、掃除。はい、男女兼用便所掃除。はい、男女兼用シャワー室掃除・・・台湾に着くまでは、ずっと掃除していたような?そして、台湾に着岸して『揺れ』から解放だー!と思ったら~『陸(おか)揺れ』が待っていた。(陸酔い・下船病とも云い、長時間~揺られた為に平衡感覚が乱れ船を降りた後も揺れた感じがしたり、めまいがする現象の事)「船酔いで、陸酔いは~酒酔いで治す!」と当時は、当時も呑んだくれていたが・・・台湾まではキツかった。なので台湾では、大理石工場で「持ってっていいよ♪」と言われた大理石を拾った記憶しか無い。

次にタイ(バンコク)へ着岸した時は驚いた!東海大は長年友好関係にあるモンクット工科大学に導かれ、バスの前後にパトカーと白バイが1台ずつ付き、どんなに大きい交差点でも「ウゥ~♪」とサイレンを鳴らして止めて、優先されるのだ。バスの中の全員が思った。(超VIP扱いやぁ~!日本に戻れば、ただの一般ピーポーなのに・・・汗)望星丸に戻った方が落ち着いた。そして、船上ではデッキで『スポーツ大会』をしたり、赤道をまたぎ南半球へ乗り込む時は『赤道祭』をした。水平線しか見えない日が何日も続き、時にイルカの大群と出会い、トビウオの大群に出会い・・・夕日が沈みかけたオレンジ色の海原に突如!クジラが出現したりもした。

バリ島は今ほどリゾート感がなく、クタビーチで(コレ、浮くのか?)というほど水が内部に溜まったサーフボードを借りたが~やはり乗れず・・・ただ、バリ島からパラオに向かう途中、オーストラリア大陸が右側に肉眼でも見え「面舵(船首が右)いっぱぁーい!」と叫んだが~『取り舵(左)いっぱい』にて、パラオ諸島へ。パラオは「自然いっぱぁーい!」だった。自然しかなかった。時間が止まっているような・・・ホント何もない贅沢な島だった。が、ここで1つの事件が起きる。というか情報が船に入る。研修生の中で、たった1人・・・『留年』が出たというのだ。引率の先生方も色眼鏡?で見そうなので名前は聞かず、しかし噂は船内中に轟いた。僕かもしれない・・・私かもしれない・・・皆、そんな不安の中『さよならパーティー』が行われた。ザ・ブルーハーツの『TRAIN-TRAIN』を私はモロパクリ♪栄光に向かって走る『望星丸』に乗って行こぉー♪と熱唱した・・・・・晴海埠頭に着岸し、出迎えてくれた仲間が笑顔で「吾郎!お前~留年だぞ♪・・・俺も~だけどな♪」と。信じられず公衆電話から家に掛けたら母が「お帰り♪」の前に「留年だよ!」と一言。(マジか?!)と思った矢先!引率の先生方も「お~吾郎だったか!なら、良かった!良かった!」と。望星丸の船長さんだけが可哀想だと唯一!私にくださったのが挿絵にある銀色のお皿です・・・♪

え~~~会社は、船によく喩えられます。それぞれの『持ち場』で仕事をこなさないと船は前に進まない、とか。それぞれの『持ち場』で様々な問題は起こるであろうが持ち場内で早急に解決しなければ・・・とか。今、三和機工は世間様の荒波を乗り越えるが如く、進むべき光がハッキリと見えております。あの方が残して下さいました。その光をシッカリと見据えて、力と力を合わせてどこまでも走っていきましょう。

 

 

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