【三和新聞】3号

2001-02-01
第3号 スイカとキックと50cc

いつもお仕事お疲れ様です。さて、今回のお話・・・2月は父の誕生日があり、また3月は命日・・・今年は一周忌なので~何となく・・・父の思い出話を書くことにしました。

2月【第39号】 Wパンチ

あれは確か、私が小学校2年生の夏休みの時でした。学校の友達を5~6人呼んで、うちの前でスイカ割りをしよう!ということになったのです。大きなスイカをひとつ買って、ビニールシートを敷いて、丁度良い棒っ切れを拾ってきて、手ぬぐいを目隠し代わりに・・・用意はもう完璧でした。僕たちは、胸をワクワク高鳴らせながらジャンケンをして、さぁ~始めようという矢先!!【親父】は現れました。「おぉぉ!みんなでスイカ割りかぁ~!!スイカはなぁ~こうやって割るんだぞ!・・・おりゃっ!!」・・・スイカは無情にも父の腰の入った唐竹割りチョップで真っ二つになりました。余りにも唐突な出来事で「ガッハッハァ~っ!!」と高笑いをしながら去っていく父に何も言えず、子供達はただ呆然と立ち尽くしていました。・・・あの時、なんであんな行動をとったんだ?と、私が大人になってから尋ねたことがありましたが、「そんなことあったか?・・・憶えとらん。」ということでしたので、未だにあの時の父の行動は不明です。ただ、余りにも強烈なインパクトでしたので、小学校時代の仲間達が集まると、必ずこの話題が今も出てきます。

次に、あれは確か、私が小学校6年生の頃でした。会社から早く帰ってきた父。夕食の支度をこれからしようとしていた母。待てないので、ラーメン屋に行こうと・・・父と妹と私は家の前の道路で、母が家から出てくるのを待っていました。手持ち無沙汰で妹を前に立たせ、当時からジャッキー・チェンが好きだった私は、妹の頭上を、回し蹴りや後ろ回し蹴りを通過させて遊んでいました。・・・それをずっと横で見ていた【親父】が一言。「吾郎、どけ。弘子、立ってろ。」・・・父の威圧的な言い方に、ただ言いなりになるしかなかった妹も、さすがに嫌ぁ~な予感を察したのか、逃げようとしたその瞬間!!「おりゃぁ~~~!!」・・・会社帰りの革靴が妹の顔面を垂直にとらえ、横っ飛びに軽く2mは吹っ飛びました。(誇張無し)≪し、しまったぁ~!≫という表情をあらわに、泣き叫ぶ妹に、駆け寄る父。家から飛び出してきた母。抑えきれない笑いをこらえる僕。妹ワンワン、父オタオタ、母ガミガミ、僕ゲラゲラ。父が慌てふためき、オロオロする姿を見せたのは、後にも先にも、この1回だけでした。

最後に、あれは私が高校1年生~16歳になる1ヶ月前の事でした。当時、私が欲しかったモノは、原動機付き自転車の免許証。つまり原付免許ですね。バイクは取り敢えず盗めば・・・とは思っていませんでしたが、まずは免許。その免許資格を取る事に対しての親の許可が必要だったのです。お金は、1発試験で当時5000円位だったので、貯めた小遣いでなんとかなります。あとは~許可。それを母に委ねましたが、予想通り、母の答えは「お父さんが良いって言ったらね。」「・・・。」父の帰りを待つことにしました。晩飯の用意がととのった頃、計ったように父は帰ってきました。一家団欒。いつになく父は上機嫌で・・・<こりゃ~いい調子だぞ・・・>、お酒が入って・・・<よし!今だ!!>ドキドキしながら話を切り出しました。「あの・・・父さん!原付免許!取りたいんだけど!!」「・・・原付ぃ~・・・原付ってチャリンコにエンジンがのっかってるヤツか?」「そうです。」「面白いのか?」「面白い・・・と思います。」「取りたいんか?」「・・・はい。」「・・・・・。」今まで明るかった筈の場の雰囲気が一挙にドンヨリと曇りだし、しばしの静寂。<うわぁ~静かすぎるぞ。ダメだなこりゃ・・・。>その静寂を破ったのは「ピシャッ!」と力まかせに置いた父の箸の音でした。そして何も言わず、そそくさと部屋を出て行ってしまったのです。母と妹と【大将】が≪ダメそうだね≫と、僕を見ています。深々とイスに座り直し、天井を見上げ、大きく溜息をついた瞬間!外から大きな声で若い男の悲鳴にも似た声が聞こえてきたのです!「や、やめてくださいよぉ~!!」何事かと思い、私達が外に飛び出してみると、裏の家のお兄ちゃんがヘルメット片手に立ちすくんでるではありませんか!!その先には、やたら姿勢良くパッソル(当時の原付)にまたがって走り出した【親父】の姿が!!当時、家の前が畑でしたので、遠くまで呑気に姿勢良く走っていく父の姿が確認できました。「何とかして下さいよ!」と、お兄ちゃん。私は自転車で必死に父を追いかけました。そして、気持ち良く家の回りを1周して帰って来た父が一言。「うむ。面白いな!・・・取って良し!!」次の日、私は試験場に行きました。

以上が、今回ピックアップした父の思い出です。修飾することは何もありません。こんな父でした。こんな【親父】が、今も私を支えてくれています。

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