【三和新聞】10号

2001-09-01
第10号 いっかいこっきり

皆さんは【ワンピース】という漫画をご存知であろうか。決して女の子の洋服ではないのである。最近、子供から若者にもウケ、アニメ化された大ヒット漫画である。漫画といえば【幼稚】というイメージを持つ方が多いと思われるが、これがなかなかアナドレナイのである。ハッキリいって【漫画】の先進国はなんといっても日本である。いわば日本の文化である。情報ソースとツールにまみれたこの世の中を、上手く浮き彫りさせている一品と私は感じているのである。しかしながら読み場所を間違えている読者の為に、不埒なイメージで語られることも少なくないのである。私が一番腹の立つ輩は、車の運転をしながら読んでいる読者である。これには見た瞬間に殺意を憶えることがあるのである。次に腹立たしいのは電車の中。サラリーマンがネクタイ締めて漫画を読んでいる姿は、とってもいただけないと思うのである。ましてや、その席が、シルバーシートだったりすると尚更のことである。さらに、その前に御老人が立っていたりすると最悪である。・・・しかしながら注意すると殺されてしまう世の中なので、実におっかないことである。私なんぞは家の中で正座をして読んでいるのである。・・・うそである。

9月【第34号】 第10号 いっかいこっきり

この【ワンピース】・・・とあるキッカケで読み出してしまったら、ついついハマってしまったのである。今、家には現在発行単行本、全19巻がズラリと並んでいる状態なのである。話の内容は、主人公ルフィーという1人の若者が、海賊の中の海賊【海賊王】と成るために、素晴らしい仲間達を集め航海を続けるという、いわば冒険活劇漫画である。その仲間ひとりひとりが集ってくるプロセスの中に、笑いあり、涙あり、感動ありの3本立てで、心に「どん!」と、迫ってくるのである。今回は、その漫画の中で、私が非常に感動したひとつの文章を皆さんにご紹介したいと思うのである。その言葉は、単行本16巻に出てくる、【ヒルルク】という名の医者が放った言葉である。その時のシチュエーションを書いていると、文才の無い私には長くなり、また書き尽くせないので省かせていただくのだが・・・まぁ~鉄砲隊に囲まれて、絶体絶命のシーンである。さて、そのヒルルクが放った言葉とは・・・『やめておけ!お前らにゃあ、おれは殺せねェよ・・・人は、いつ死ぬと思う・・・』という言葉である。・・・人は、いつ死ぬのだろうか?シチュエーション説明を無視して更に書かせて頂こう。ヒルルクはこう続けるのである。『人はいつ、死ぬと思う・・・?心臓を銃で撃ち抜かれた時・・・違う!不治の病に冒された時・・・違う!猛毒キノコのスープを飲んだ時・・・違う!・・・人に、人に忘れられた時さ!!』この文章を読んで、私はズキッときたのである。『人は、いつ死ぬと思う・・・人に、忘れられた時』こんな漫画の一文章から、パァ~ンと私の中で何かが弾けてしまったのである。

【上がって三代、下がって三代】という諺がある。血縁のつながる親類でもつきあえるのは三世代ぐらいまでで、それ以上は他人と同じだという意味である。つまり、親の事はもちろん忘れないのである。したがって私の記憶の中に今も強烈に生きているのである。祖父母もそうである。運の良い方は曾祖父母まで憶えているかも知れないのである。また子供もそうである。孫もそうである。運良ければ曾孫まで・・・。皆、何かしらの己の信念や意志を伝え、受け継ぐ者がいれば、その人は死なないのである。そう考えると、私もそろそろ子供が欲しくなってきた今日この頃である。しかし、これは血縁だけではないのである。例えば【仲間】もそうである。遊び仲間も、仕事仲間もそうなのである。また銀幕の向こう側でも【何か】を残してくれた人物は沢山いるのである。松田優作やブルース・リー、ジェームス・ディーンにマリリン・モンロー、黒澤監督もそうである。世代を超えた歴史上でも、坂本龍馬に織田信長、アインシュタインに聖徳太子?!?・・・小泉内閣は世代が変わってもジョン・F・ケネディのように語り継がれる政界のドンになれるだろうか・・・。話は相変わらず脱線方向に向かってしまったが・・・時に、生きているのに死んでいるような人に出会うのである。しかし、死んでいるのに活き活きと生きている人がいるのである。

【太陽】は独りでも燃え続けるのである。燃え続けることが出来るのである。その炎はいずれ飛び火して周りをも燃えさせることが出来るのである。止まってはいけないのである。要は自分の人生をどう必死に真剣に生きて、何を残し伝えるかである。たった一度の人生である。たった【いっかいこっきり】しか、人生は無いのである。死んでしまえば、冷たいのである。生きているということは、こんなにも熱いものなのである。

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