【三和新聞】15号

2002-02-01
第15号 Wパンチ

さて2月です。恒例・・・というわけではありませんが、2月は父の誕生月、3月は三回忌に当たるということで・・・今回も父の思い出話をしたいと思います。しかし、三和新聞・・・毎年2月は父の話、というわけではありませんので~あしからず。今回で父の話は打ち切り!・・・の、つもりです・・・そろそろ父(乳?)ばなれもしないと・・・ってことでもないけど・・・。

2月【第39号】 Wパンチ

あれは確か、私が高校三年生~普通免許を取りたての頃でしょうか・・・母はその時、何故か居らず、父と妹と私の3人で、親戚の家まで私の運転で遊びに行った帰り道のことでした。お酒が入ってカナリ気持ちよさそうな父。後部座席で今にも寝そうな妹。父の【足】とされながらも、免許取りたてで車を運転することが楽しくてたまらない私・・・。「各自、身の回りを整頓し上甲板に整列!出発進行!!」・・・訳の解らない父の口癖に、ほな、ゆっくり帰りまひょか!という和やかなムードの中・・・事件は起こったのでした。信号待ちをしていた私達の車に、後ろからドッカ~ン!と車がぶつかってきたのです!つまりは【オカマ】ですね。結構なショックだったので、まず後部座席にいた妹に「おい!大丈夫か?!」「うん、大丈夫」父に「大丈夫?」「応!大丈夫だ!」と確認を取り、直ぐさまバックミラーでぶつかってきた車を確認しました。車の中には(ヤッちまったぁ~)という表情のヤンキー系のあんちゃんが一人・・・取り敢えず、私は車から降りてぶつかった互いの損傷具合を見ました。そのあんちゃんもすぐ出てくるものだろうと思っていたのに、一向に車から降りてくる気配がないのです。なんだぁ~?!と思いながら見ていると運転席の窓がスゥーッと下がって、人差し指でこっちに来い!と合図するではありませんか!【はぁ~?!】私はカチンときて「お前がぶつかったんだから、お前が来いよ!」と叫びましたが、一向に指の来い来いサインを止めません。ラチが明かないので、しょうがなく近づくと「免許証と車検証、持って来いや!」と一言。【はぁ~?!】私の血管がブチ切れそうになったところで父、登場。「応!なにやってんだこらぁ~!!」一見、ヤクザの親分に間違われ易い父に、そのあんちゃんはビビる事なく、また一言。「うるせぇ~白髪!!」これには父もキレたようで「応!なんだと小僧!車から降りろ!!」しかしあんちゃんの横暴な態度は変わらず「免許証と車検証、持ってこい!」の一点張り。こちらも「まず降りろ!お前が先に見せろ!何より謝れ!」の3点セット・・・しかし時間は経つばかり。警察を呼ぼうにも当時、携帯電話という便利な代物はありませんし、何よりあんちゃんが逃げてしまいそうな雰囲気でしたので、車から降ろすことが第一優先。開いた窓から手を突っ込んで胸ぐら掴んで匹吊り出そうものなら「傷害罪で訴えるぞ!警察呼べやぁ~!」と、どっちが被害者だか分からない口振り。にっちもさっちもいかない状態でイライラしているところで妹、登場。「あなた男でしょ、まずは出てきなさいよ。それともなぁ~に?私達が怖いの?」普段は口生意気な妹が、この時ばかりは強力助っ人外人のように、流石!我が妹よ!娘よ!ってな具合で、的確に言葉のパンチをあんちゃんに叩き込みました。冷静沈着、したたかにしてマシンガン・・・父と私は尊敬の眼差しで妹を見つめていました。そんな中、私の脳裏にはその時、もうひとつ別の思い出が蘇っていました。あれは私が小学校1、2年生の頃でしょうか。やはり【オカマ】を掘られて、父が大学生ぐらいの男3人を相手に口論しているのです。3対1で、ナメられたのでしょうか・・・父が大変な剣幕なのです。当時、後部座席でその様子を見ていた私は<お父さんが喧嘩にでもなって、もし負けたらどうしよう>と恐怖に震えていたのです。結果は、父の気迫に気後れしたように、最後は学生達が頭を下げていましたが・・・あの時は後部座席で祈るように見ていることしかできなかった私。しかし、今は違う!そう思い出にふけっていたら、あんちゃんが妹の口攻撃に堪らず車から降りて来るではありませんか!顔は既に紅潮しまくっています。「ほぉ~ら!ギャラリーもこんなに集まっちゃって、あなた恥ずかしいわよ。」そんな一言がトドメだったのか、あんちゃんはどうしようもない怒りを拳をもって妹にぶつけようとしてきました。さて出番です!私はあんちゃんのパンチを左手でガードし、渾身の力を込めた右ストレートを顔面に叩き込みました!・・・と、思ったら~私以外の、もうひとつの拳も、あんちゃんの顔面を捉えているではありませんか!!ふと、みるとそこに【親父】が「応!この野郎!応!この野郎!!」とパンチを繰り出しています!!「ちょっと待ってくれ!これは俺の仕事だよ!」と父を制し、そこから先はジャッキー・チェンのような戦いッぷり。最後は右回し蹴り一発!ギャラリーから「Ohhhh~!!」と、歓声と拍手があがるほど綺麗にキマってKO!!・・・さてさて、面倒なことにこれ以上巻き込まれるのは御免だわ!ってなもんで、サッと一家揃って車に乗り込み、その場を立ち去りました・・・。

車中、興奮冷めやらぬ状態でしたが、当時から不整脈で心臓が弱かった父を心配し、「大丈夫かい?」と声を掛けたら、右手を気持ちよさそうに突き出し「応!殴ってやった!」と、一言。「違うって!胸は大丈夫かって聞いてるんだよ!」「・・・応!殴ってやったぁ~!!」「・・・・・。」こんな父でした。こんな【親父】が、今も私を支えてくれています。

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