【三和新聞】51号

2005-01-01
第51号 本当の手 

今年のお正月~あれは3日の事である・・・250ccのスクーターバイクで都内のド真ん中を私はブイ、ブイ、ブイと走っていたのである。すると何故かプスン、プスン、プスン・・・と、エンジンが止まった。ガス欠ではない。バッテリーが上がったワケでもなさそうだ。しかし、キックが無いので『押し掛け』も出来ない。そして近くにはバイク屋もガソリンスタンドもない。あってもお正月なので閉まっている・・・。途方に暮れながらバイクを押して歩いていると~私の脳裏に懐かしい思い出が蘇ってきた・・・。

2月【第63号】 本当の手

以前にもお話しした事がある~私のバイク便時代の話である。数えれば~もう11年ほど前か・・・その日も確か、お正月の三が日だったと思う。国道20号(甲州街道)を西へ~国立市に入った辺りである。荷物を届け終え「さて都内へ戻るべか!」と思いきや、後輪がパンクしている。見れば五寸釘はオーバーだが立派な釘がタイヤに垂直に刺さっている。「あら?まぁ~!」である。チューブ式なので、こういう事態に脆い。応急パンクセットは持ち合わせていたが、穴がデカ過ぎて処置しきれない。万事休すである。しかしまぁ~荷物は無事に届け終えたのだから~責任は果たしたし!後は都内へ帰るだけじゃないの!とプラスに考え、のんびり気分でバイクを押し始めたが・・・400ccのバイクがパンクしていると~やはり、カナリ、重い。「こりゃ~帰れんわ!」と身体が悟るには、さほど時間も掛からず~結局、困り果ててしまった。そこへひとりのオバちゃんが「どうしたんだい?」と声を掛けてくれた。事情を話すと「5kmほど先にバイク屋さんがあるから」と教えてくれた。更に「歩くのは大変だから」と自転車まで貸してくれたのである!「嬉しい!有り難う~オバちゃん♪」ということで、行ってみたが~そこはバイク屋さんではなく、中古車センターだった。(オバちゃん・・・)と心の中で思いつつ、強引にもソコのオッちゃんに事情を話したら~助けてくれるという!「わぉ!オッちゃん~有り難う♪」である。店の後ろからトラックを出してくれて、荷台に自転車を載せ、まるで『わらしべ長者』かの如く、パンクバイクとオバちゃんの元へ連れて行ってくれた。オバちゃんに自転車を返し、荷台にバイクを載せたが~今度はバイクを固定するモノが無い。悩んでいるとオッちゃんが私に、こう言った。「君が荷台のバイクにまたがり・・・まぁ~頑張れ!」と。15kmほど離れた所で営業しているバイク屋さんとのコンタクトも取ってくれて、いざ!出陣♪・・・トラックの荷台のバイクにまたがり~踏ん張る私・・・道行く人々が振り返り、指を指しつつも~気持ち良い興奮と、恥ずかしさの熱は~三が日の風が冷やしてくれた・・・人に助けられた懐かしい思い出である。

さて、話は今年のお正月に戻り・・・行けども行けども一向にバイク屋もスタンドもない。寒いはずの冬空の下、汗水タラタラ~蒸気を発してバイクを押して歩いているのだから~目立たない事もない。ふと気付くと、ひとりの若者が一緒に押すのを手伝ってくれたのである!「悪いね~有り難う♪」と私が言うと、爽やかな笑顔で「行く方向~一緒ですから!」と。・・・話していると、その若者もバイク乗りで~以前、同じ様な状況で誰かに押して貰ったことがあるらしく~いつかこんな場面に出くわしたらと、思っていたそうな・・・私は人に助けられてばかりの人生である。

さて、こういった【助け合い】はとても大切だと心から思う。助けられた時に、本当に有り難く感じるし、本当に有り難く感じたからこそ~また助ける事が出来るのではないかと私は思う。是非、繰り広げたい【大切なこと】である。・・・ここ最近、地球のあちらこちらで天災が起き、また、続いている。被災された方々に世界や全国からの義援金や救援物資活動等の【支援】 の手が差し伸べられている。私も何らかの形で手を差し伸べてはいるが・・・正直なところ~自分に実際に降り懸かったことがない想像の域なので、未だ心の奥底では【対岸の火事】的要素が払拭し切れていない感がある。つまりは足りないと思うのである。何が足りないか?それは~実質、自分の身に降り懸かったという立場(気持ち)での【本当の助け合う手】を差し伸べることであり~瞬間的に即!決断するという~何よりもその手を差し伸べる【スピード】ではないかと私は思うのである。

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