【三和新聞】54号

2005-05-01
第54号 後藤二等陸士撃ちます!

パッパ、パパ♪パッパ、パパ♪パッパ、パパ♪パパパ♪パッパ、パパ♪パッパ、パパ♪パッパ、パッパ♪パパパ♪~。夏は六時、冬は六時半、起床ラッパと同時に戦闘服に着替え半長靴を履き、200mほど離れた場所まで猛ダッシュ!そして、横一列に整列。班長が大きな声で「番号!」と叫ぶと、整列している我々は顔を左に向けながら、「いち」、「に」、「さん」、「し」・・・と大きな声で呼称して朝の点呼は無事に・・・終わらない。一番最後に整列した者や、戦闘服に乱れのある者、はたまた班長の機嫌が悪い時などは腕立て伏せ100回が待っている。そう!自分は二年間、日本の国を守る為、陸上自衛隊に入隊(当時就職難でもあり、頭が・・・)して普通では体験出来ない事が沢山あった。

5月【第66号】 後藤二等陸士撃ちます!

北は北海道、南は九州沖縄から人が集まり、生活習慣の違う者同士(男)が同じ屋根の下で24時間365日も生活していれば、いやでもいざこざが起きて不思議ではない。しかし、自衛隊組織は団体生活には『連帯責任』が当たり前で、例えば同じ班(12人)の者が外出して門限までに1人でも遅れれば、翌日全員外出禁止(ひどい時は一週間)となるのである。1人の身勝手な行動が他の同期(11人)に迷惑を掛けるのである。一般的には規則に違反した者だけを罰するのが普通だが、全員で罰を受けることにより他人に迷惑を掛けてはいけないという意識と連帯感を強める。しかし、いつも他人に迷惑をかけるヤツはだいたい同じヤツで、江戸時代ではないが村八分という小さな連帯感が生まれターゲットが決まりイジメが始まる。今の時代みたいなインケンなイジメ(いたずら?)では無く、夜、寝静まった頃、いたずら小僧3、4人がそ~っと起きて同期の寝顔を確認してからロッカーの中に入っている戦闘ズボンの裾や、戦闘服の袖をきつく縛りまたロッカーの中に戻して床につき朝を待つ。もちろん、いたずらされた本人は、朝の点呼の整列はビリ。朝の点呼の集合に時間が、かかり過ぎたことで『連帯責任』全員腕立て伏せ100回+αというユーモアたっぷりな、いたずらである? いたずらを数えたら、両手あっても足りない~♪(「SACHIKO」ばんばひろふみ より ごとうひろくに・・・)

自分は、幼い頃から六歳離れた兄よりいたずらを受け育った。あれは小学校5,6年生の頃、朝起きて食卓に座っていなや、親父とお袋が笑いながら「どうした?その顔、鏡見てこい!」と言うので鏡をのぞいて見てみたら顔中落書きだらけで、おまけに油性マジック。いたずらをした兄は、何食わぬ顔をして朝飯を食べていて、兄を怒るにも時間がない。<早く顔の落書きを落とさねば、学校に遅刻してしまう!>と思いながら、顔の皮が一枚めくれる位にゴシゴシ洗っているうちに、兄は朝飯を食べ終え学校へ行ってしまう。今思えば、いたずらをした相手に怒るスキを与えない絶妙なタイミングであった。そのような環境の中で18年間育って、いたずらが生活の一部になり自分もいたずらを、してもされてもさほど気にならなくなってしまった。習慣とは恐ろしいものだ。いたずら好きな同期は、だいたい次男、三男が多いようだ。幼い頃から兄に、いたずらを受け同じ境遇で育った者達の連帯感は不思議なものがある。『いたずら』(人の迷惑になることをすること。悪ふざけ。)と、辞書に書いてある。確かに、人の迷惑になるのは悪い事だと分かっちゃいるけどやめられないのが、いたずらの醍醐味である。

さて自衛隊では、6ヶ月間の教育終了後、各部隊に配属され、自分は高射中隊に配属された。高射中隊とは、対空戦闘部隊として航空機等に対し射撃を行う部隊である。(因みにウチの女房も自衛隊勤務時に撃ち落とした。・・・関係ないけど。)対空実射訓練は、地上では狭いため青森県六ヶ所村や、鹿児島県佐多岬の海岸沿いで行う。六ヶ所村での対空実射訓練は、毎朝5時起床、7時には演習場に集合し5名1班で他の班と時間を競いながらレーダーと高射機関砲を海に向け配備する。実射訓練は、晴れていて海岸から水平線(射撃中に漁船が入って来る事がある為)がハッキリ見える時に行う。実射訓練の方法は、大型ラジコン飛行機後方にロープで的を付け飛行させ、その的に向かって射撃!もちろん命中すれば地上のモニターに映し出され、確認できるようになっている。(当時、自分は弾薬主として高射機関砲上に配置していた)

さて、対空実射訓練当日。大型ラジコン飛行機が、射程距離内に入ると指揮官の「撃て!」の号令と共に各部隊の高射砲から一斉に、爆音と砂煙あげて何百発もの弾が発射され「撃ち方止め!」の号令で射撃は終わり、モニターを確認。なんと、一発も命中していないのだ。よほどラジコン飛行機の操縦テクニックが上手なのか?レーダーが的に追随できないのか?と思い空を見ていたら、今まで飛行していた大型ラジコン飛行機が見当たらない・・・。実は的ではなく、大型ラジコン飛行機(一機、約1,000万円)を撃墜してしまい一時中断!別の大型ラジコン飛行機を飛ばして実射訓練を開始したが、またラジコン飛行機を撃墜してしまった!・・・これが自分が経験した訓練の中では一番実戦的な訓練だった。因みに、弾のお値段は一発約2万円。それを一回の対空実射訓練で合計16,000発撃ち、やっぱり戦争にはお金がかかるな~と、実感した・・・。

自分は、2年間自衛隊で職務遂行と教育訓練によって、協調性、責任感、いたずら、などを培い、今の自分があると思う。これからも、今までの経験を生かして、面白可笑しく!やっていくつもりです。・・・・・カムサ、ハムニダ!!

Copyright(c) 2009 SANWA KIKO CO.LTD All Rights Reserved. Design by 三和機工株式会社