【三和新聞】43号

2004-06-01
第43号 お待たせしません!

「お待たせしません!」と書かれた看板を信じ、私は池上商店街の写真屋さんに飛び込んだ。証明写真を撮る為である。結構~歩き廻り、独りでカーテンをピシャ!と閉めて撮る、あの証明写真BOX機?を探したのだが見つからず、時間も無かったので飛び込んだ次第である。「すみませ~ん!」「・・・はぁ~い」店の奥からは奥さんが妻?楊枝をくわえ、ノッソリと出てきた。「あんた!お客さんだよ!」「・・・ほぉ~い!」御主人の声はすれども一向に姿は見えず、私の頭を過ぎったものは【お待たせしません!】の看板の文字・・・。ハマッたかしら?と思い始めた頃~下っ腹がギュルルルっと音を立てた。

6月【第67号】 お待たせしません!

「はぁ~い・・・ここを見てぇ~・・・カシャ!」見るからにオットリとしたご主人が持つ、カメラのシャッターが下りるまでに要した時間は~入店してから10分程度か・・・私は軽い腹痛を憶えながらも我慢した。「今、すぅ~ぐ・・・現像するからねぇ~」と言われ、何故か目の前に出されたのは灰皿。「タバコ、吸うかい?1本吸ったら~出来てるよ!」・・・今ここで煙草なんぞを吸ったもんなら~暴れ始めたお腹に下剤を注ぐようなモンだと分かっちゃぁ~いるけど情景反射で煙草に火を付けてしまう喫煙者の悲しい性(さが)。予想通りに痛みは倍増~額には脂汗である。「あのぅ~早くして頂けますかね?」渾身の力を込めると出てしまいそうなので、そっと私は呟いた。「はぁ~い!お待ちどう様!」・・・店の奥からは奥さんが妻?楊子をくわえ、持ってきてくれたのは~何故か、コーヒー。ここは喫茶店か!とツッコミたい気持ちを抑えながらも一口飲む。お味は~色の付いた、ほぼ「お湯」である。(もうダメだ・・・限界だ・・・)「最近は~デジカメが幅を利かせちゃってねぇ~」なぁーんて御主人の世間話に耳を傾けている場合ではないのである。この一刻を争う緊急事態。「あのぅ~お手洗いを・・・」と言い掛けたところで「はぁ~い!上がったよ!」と、御主人。その声に反応したのか、下っ腹がスゥーっと、落ち着いた。バイオリズムのような【波】が峠を越えたようである。「3×4cmだったよね?」「・・・はい。」切断機に掛けるのかと思いきや、御主人がおもむろに持ち出したのは定規とカッター。「ちょーっと、待ってねぇ・・・」丁寧に計って切った割には、微妙に直角でないのが堪らない。更に「その用紙に貼るのかい?」と、ノリまで持ってきてくれたのだが、そのノリが固まっていて、これまた出ない。「あのぅ~自分でやりますから・・・」と言ったのだが、「パッ!」と伸ばされた御主人の片手によって私の声は遮られた。先程まで穏やかな顔つきだった筈の御主人が、最後まで仕事をやり遂げないと気が済まない職人根性?丸出しのイカツイ顔に変貌している。「いいからチョット待っててよ!」・・・やっとこノリ付けを終えて、御主人も満足そうに作業終了。そして、一言。「はい!じゃぁ~2枚で1500円にまけとくわ!」「・・・!(高っ!)」

店を出て時計を見ると、優に30分は居ただろうか・・・。<お待たせしません!・ほのぼのとした空気・灰皿・コーヒー・世間話・切ってノリ付け・1500円・まけとくわ・30分・・・>走馬灯のように複雑な感情が流れつつも、写真屋さんという存在価値に自分なりの言い訳をつけながら会社に戻る帰り道~何故か目の前に、あの写真BOX機がっ!そこには「お待たせしません!25秒!3×4cmは6枚で700円!」・・・我慢していた下っ腹が解き放たれそうな衝撃である。笑うに笑えず、また込み上げてきた痛みに耐えながら私は会社のトイレに一目散。そして、耐え抜いたスッキリ感。スッキリした余裕の便座の上で、もう一度考えた。「・・・自分で、デジカメで撮りゃぁ~良かったんじゃねぇーか・・・?」デジタルに囲まれている筈の日常。効率良く捌く為のデジタル。使う側のアナログの情けなさ・・・身に染みた出来事である。

さて、この苦労?して撮った証明写真・・・何の用紙に貼り付けたかと申し上げると~6月13日に行なわれる「蒲郡トライアスロン大会」の申込書である。・・・アナログ全開!駆け出しからコケつつも~頑張る所存である。

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